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健康経営の〝基本のき〟を学び、 取り組みの入口を体験する


「健康経営」が注目される昨今。より、「健康経営」の理解を深め、興味を持っていただくため、全国各地でセミナーやワークショップが開催されています。ここでは、そんなイベントに健康社長編集部がおじゃまし、その様子をお伝えします。

今回レポートするのは、2月某日に一般社団法人 五反田バレーの主催で行われた「五反田ウェル会」。一部は、現役格闘家でありながら、健康経営アドバイザーとしても活躍している株式会社アローの阿藤貴史さんをお迎えして「健康経営」の基本を学び、二部は、取り組みの第一歩につながるワークショップを行いました。




ここ数年で、急激にベンチャー企業やIT企業が増えているという五反田。アメリカのシリコンバレーになぞらえて、五反田バレーと呼ばれているこの地域では、これまでもエンジニアを対象に情報交換や会社という枠を超えた交流などを目的としたユニークなイベントが企画されています。そんな中で、エンジニア以外の職種の方も参加できるイベント、そして、企業のため、そして五反田のためになるようなイベントを、ということで、今回企画されたのが、「五反田ウェル会」。そして、企業として健康に取り組もうとするこのイベントの第一回は、「健康経営」の基本を学ぶというテーマで開催されました。

今回の主催者である一般社団法人 五反田バレーの中村岳人さんは、今回のイベントの主旨をこう話します。



「五反田に多いベンチャー企業やIT企業で働く人たちは、規模が小さいということもあってか、そこまで健康を意識している人は多くありません。その一方で、エンジニアという職種の方たちは、働き方も含めて健康意識が高くなってきているように感じます。また、長期的な成長を考えている企業も増えているように思います。そういう今だからこそ、五反田という街で、そういう企業の方たちが交流を図りながら、健康について考えるイベントができないだろうか。そう思ったのが、今回のイベントのはじまりです」


健康経営とは、人の良い循環のために投資すること

参加者のほとんどは、「健康経営」という言葉は聞いたことはあっても、まだその内容やはじめ方がよくわからないという健康経営ビギナー。まずはわかりやすく〝基本のき〟から! ということで、第一部は『ベストパフォーマンスを目指す、企業における健康づくり』と題して、株式会社アローの阿藤貴史さんが健康経営とはなんぞや?ということをお話くださいました。



「健康経営は、社員のみなさんが長く働き続けるための〝未来に対する投資〟であり、社員一人ひとりが日々の業務の中でパフォーマンスを十分に発揮するための〝今に対する投資〟。企業としての成長を考えるとき、ぜひ経営戦略のひとつとして取り組んでいただきたいのが、健康経営です」
阿藤さんのセミナーは、こんな導入からスタートしました。

超高齢化社会と呼ばれるほど高齢者は増え、厚生労働省が2040年までに70歳までの就労機会を確保することを目指すことを発表した今、実際に70代になっても働いていたいを願うシニア層は、約80%も存在します *1。しかしながら、健康上の理由で仕事ができないという60代は約27% *2。働きたい気持ちとは裏腹に、健康を維持できないという方は少なくありません。そして、その健康格差というものは、若い時に始まっていて、年齢を追うごとに差がどんどん広がっているのだとか。ですから、健康への意識と行動は20代、30代からでも早すぎることはない、と阿藤さんは言います。


 
そして、焦点を〝今〟に移すと、アンケート*で勤務中に100%のバフォーマンスを発揮できていると答えているのは、わずか11% *3。発揮できていない理由としては、肩こり、睡眠不足、疲労感、鬱など。せっかく社員を雇っていても、一人ひとりがパフォーマンスを発揮していなければ、会社としての生産性は低下し、損失も大きくなってしまいます。「健康経営は、人の力の良い循環を起こすための投資。そのために、今からでもできることはありますよ」
と阿藤さん。

そして、一部の後半は、どんなところから健康経営を始めていったらいいのか、という実践的なお話しと考え方の演習に発展していきました。
「健康経営に取り組むにあたり、大切なのは課題を確認すること。身体状況は健康診断の結果でわかりますが、働き方・エンゲージメントについては、社員への簡単なアンケートを定期的に実施するといいと思います。そして、それを元に、重点対象者を絞り込むことが第一歩。ターゲットが見えてくると、施策を考えやすくなると思います」

株式会社アローでは、朝食欠食率を下げるために、会社の近所の喫茶店でモーニングを食べると半額がキャッシュバックされる仕組みを作ったり、運動習慣者比率を上げるために、月に1回特別講師を招いてスポーツイベントを実施したり、自由な発想で健康を目指す施策を実施しています。そういう自社での取り組みを踏まえて、阿藤さんはこう締めくくりました。

「対象者にうまく自分ごとにしてもらうことが大切です。そのためには、取り組みにキャッチーなタイトルをつけたり、定期的に成果を共有したりすることも必要かもしれません。企業利益として結果が出るまでには、最低でも5年はかかると思います。そのくらい時間はかかりますから、中間目標を設けて行くと取り組みやすいと思います」


*1厚生労働省:令和元年5月29日2040年を展望した社会保障・働き方改革本部資料1
*2総務省:「平成 28 年労働力調査」
*3「プレゼンティーズム評価とストレスチェック結果との関連性についての調査研究」株式会社ヒューマネージ 株式会社保健同人社


書き出して共有することで課題と施策が見えてくる

イベントの第二部は、大塚製薬の進行のもと、少人数のグループに分かれて、健康経営の課題の確認と計画の作成を行うワークショップが行われました。自己紹介では昨晩の睡眠時間をシェアするというルールが設けられたことで、初対面同士でもすぐに打ち解け、和やかな雰囲気の中でワークがスタートしました。


 
ここで行われたのは、お題に対して各自が答えを考え、それをグループ内でシェアしていく、というもの。全部で4つのお題が出されたのですが、前半2つは体と心の課題を挙げるもの、後半2つはその改善と施策のアイデアを広げるもの。付箋にアイデアを書き出し、グループごとのホワイトボードに貼り付けていきます。


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〈 体と心の課題を挙げるもの 〉
Q1.
健康経営を実践するために、現在課題として挙げられる従業員のカラダの心配事はありますか?

Q2.
健康経営を実践するために、現在課題として挙げられる職場のストレス原因はありますか?
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〈 改善と施策のアイデアを広げるもの 〉
Q3.
健康経営を実践するために、社内でどんな情報が共有されると良いですか?

Q4.
健康経営を実践するために、社員を取り巻くどういった環境を改善させるべきですか?
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改善と試作としては、働く環境をよりストレスのない心地よいものにしていくために、「近所の美味しいお店を教えあう」「サンドバッグを設置する」「オフィスの一部に青竹踏みを敷き詰める」「オフィスにアロマを焚く」など、様々な角度からアイデアが出ていました。ひとつのお題を考える時間を2分という短時間で区切ることで、あまり考え込まずにカジュアルに出していけたのもよかったのでしょう。グループ内でアイデアをシェアし、ディスカッションすることで、自分では考えつかなかったアイデアに出会うことができたり、そこから派生して情報交換をすることができたりしていたようです。





最後に、今回参加されていた方に、感想をお聞きしました。


「健康経営は大企業がするものだと思っていたので、中小企業でもやるべきものだということがわかって、身近に感じることができましたね。ワークは、企業の垣根を超えて様々な方の意見を聞くことができたのもよかったですね。すぐに健康経営に取り組むというのは難しいかもしれませんが、組織として困っていることを洗い出すことからでもやってみたいと思います」
(株式会社 クレオフーガ/宮崎貴恵さん)



「今回、健康経営について勉強させていただいて、段階を踏んで少しずつ取り組んでいけたらと思いましたね。ワークでは、考えたことがないようなアイデアも聞けたのがおもしろかったですね。うちの会社はリモートワークが多くてコミュニケーション不足になりがちなので、お店情報をシェアするとか、そういうアイデアはすぐに取り入れてみたいです」
(株式会社 Zouk/藤田祐也さん)



「健康経営」というと少し構えてしまって、何から始めたらいいかわからないという方は少なくないと思います。しかし、今回のイベントのように、まずは「健康経営」の基本を理解するところから一歩踏み出し、ワークで行なったように、カジュアルな形で課題を探ってみるというのもいいのかもしれません。




主催:五反田バレー、品川区
協力:大塚製薬、株式会社アロー