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【連載第8回】楽しいセルフケア教育で生活習慣向上を目指そう

健康経営を進めるうえで欠かせない取り組みのひとつが「職場のメンタルヘルス対策」です。ストレス要因が多い現代、メンタルヘルスケアは私たちの必須スキルと言っても過言ではありません。
また、組織においては、不調の早期発見・早期対応だけでなく、従業員がストレスを抱え込まず健康にイキイキと働ける環境を整えることが非常に大切です。とはいえ、いったい何から始めればいいのかお悩みの方も少なくないでしょう。

この連載では、公認心理師として多くの企業でメンタルヘルス対策のサポートをしている株式会社ハピネスワーキングの船見先生に、メンタルヘルス向上の具体策をご紹介していただきます。
ストレスチェックで高ストレス者と判定された人やメンタルヘルスに不安を抱える人の中には、生活習慣が乱れている人が少なくありません。生活習慣は心と身体の健康を保つ基本ですが、おろそかになりがち。
そこで今回は、『健康経営優良法人(中小規模法人部門)認定要件』の「④管理職又は従業員に対する教育機会の設定」に該当する、セルフケア教育についてお話しします。ポイントは「楽しく!」です。





いきいきしている人は、生活習慣を大切にしている

私は仕事柄、たくさんの方とお会いしますが、ときどき、非常に元気はつらつとしていて、さまざまな困難をすうっと乗り越えてきたという方に出逢います。そんなときは、心も体も健康に保つ秘訣を伺います。すると、

「どんなに忙しくても7時間の睡眠を確保するようにしています」
「3食きっちり食べ、特にタンパク質をたっぷり摂るようにしています」
「毎週末、10km走っています」

このように、生活習慣をことさらに意識し、良質に保つよう工夫をしていると、ほとんどの方がおっしゃいます。あたりまえのことではありますが、生活習慣が健康の秘訣なのだと痛感します。

これは、私が記者をしていたころから感じていたことでもあります。経営者や俳優など1000名超の著名人にインタビューをしてきたのですが、多忙にもかかわらず驚くほど健康でいきいきとしている人にその秘訣を訊くと、その多くは生活習慣を大切にしているという話をしてくださいました。
80~90歳代でも現役でご活躍される方に何度か取材をしましたが、年を重ねても元気な理由を尋ねると、「肉を食べています」とか、「60歳を過ぎてからジョギングを始めたんですよ」など、結局、生活習慣の話になるのです。

メンタルヘルスを保つというと、「仕事が忙しすぎるのでなんとかしなければ」とか、「ものごとのとらえ方を変えなければいけない」、「人間関係のストレスから逃れなければ」などと考えがちです。
しかし、同時に大切にしていただきたいのが、生活習慣です。なぜなら、私たちの心と身体は生活習慣によって作られるから。どんなに仕事をセーブしようと人間関係を変えようと、生活習慣が乱れていたら健康をキープするのは難しいものです。
心身が健康なら、ものごとのとらえ方を適切にする余裕や、人間関係に寛容になる余裕も出てくるというものです。

そこで、従業員の皆さまが健康を保てるよう、年に1度は生活習慣向上のためのセルフケア研修を行うことをおすすめします。

栄養士や運動トレーナーを招くのも〇

生活習慣向上のためのセルフケア研修は、「栄養、運動、休養」のバランスを取ることの重要性を学べる内容にするといいでしょう。
例えば「栄養」。栄養バランスを取ることの大切さを伝えつつ、学びを実践に移せるよう、摂取した栄養素をチェックできるシートを配布するのもいいですね。多忙な現代人はコンビニやファストフードを利用する機会も多いですから、栄養士さんにコンビニでの食品の選び方や、ファストフードで栄養バランスを取るための工夫を解説してもらうのも、とても実用的だと思います。

「休養」に関しては、睡眠の質を高めるためのリラクセーション法「漸進的筋弛緩法」を学んでもらったり、「散歩する」「空を見上げる」など日常の中で簡単にできる解消法を10個考えてもらうワークもおすすめです。
カウンセラーや栄養士など専門家を招いて講義をしてもらうと、より詳しい話が聞けるでしょう。また、メンタルヘルス推進担当者など社内の人がファシリテーターとなって研修を行えば、社風や働き方に合った内容で構成できますね。

ポイントは「楽しく!」です。楽しくなければ実践に移そうという気になりませんし、継続できません。生活習慣を向上させることでどんな変化が望めるのかをしっかりと伝えつつ、楽しく明るい雰囲気で進めることを大切にされると、研修の効果も上がるでしょう。
ちなみに、私は過去、運動のトレーナーとペアを組み、ある企業でセルフケアセミナーを行っていました。私がメンタルヘルスの基礎知識をお伝えし、その後、トレーナーが運動を指導するという流れでしたが、どの年齢層の方にもとても好評でした。

従業員が健康であってこそ、会社は元気になります。セルフケアの大切さを皆で折に触れて意識していきたいですね。




 【プロフィール】

船見敏子(ふなみ・としこ)
株式会社ハピネスワーキング代表取締役。
公認心理師、1級キャリアコンサルティング技能士、産業カウンセラー。
雑誌編集者を経て現職。産業分野を中心に、組織コンサルテーション、カウンセリング、研修などを実施し、職場のメンタルヘルス向上のサポートをしている。これまでに約1000社、10万人のメンタルケアに携わってきた。著書に『幸せなチームのリーダーがしていること』(方丈社)など

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