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【連載第9回】「ココロの元気度チェック」で早期発見・早期対応docx

健康経営を実践するいちばんの目的は、「従業員全員が健康にいきいきと働くこと」だと思います。そのために日々、さまざまな施策や工夫をしていらっしゃることでしょう。しかし、どんなに工夫をしても、心身の調を崩す人が出てしまうこともあります。さらには、体調不良に陥っても、周囲に迷惑をかけたくないからと、調子が良くないことを隠して頑張り続ける人もいます。

だからこそ大事なのが、メンタルヘルスケアにおける二次予防、「早期発見・早期対応」です。疲労やストレスが溜まっている人に早めに気づくことができれば、そのぶん早い回復につながります。そこで今回は、早めにメンバーの変化に気づく具体策をお伝えします。

この連載では、公認心理師として多くの企業でメンタルヘルス対策のサポートをしている株式会社ハピネスワーキングの船見先生に、メンタルヘルス向上の具体策をご紹介していただきます。

嬉しいできごともストレスになる

健康経営に取り組む中で、最も難しいと感じるのは、「メンタルヘルス不調者への対応に関する取り組み」ではないでしょうか。誰でも心身の調子を崩すことがありますが、その要因のひとつがストレスであることは少なくありません。

ストレスとはそもそも、外部から加わる刺激や変化のことを指します。ストレスと言って思い浮かぶのは一般的に、仕事がきつい、人間関係がうまくいかない、経済的不安などですが、それだけではありません。暑さ・寒さや騒音、病気や、加齢で体が思うように動かないといったこともそうですし、パソコンやスマートフォンなどから流れてくる情報も、非常に大きな刺激=ストレスです。

また、自分にとって嫌なことだけでなく、昇進や結婚、子供が生まれるといった嬉しいできごとも刺激である以上、ストレスになってしまいます。
つまり、悪いことであれいいことであれ、刺激はすべて、ストレスになるのです。私たち現代人は毎日、なんらかのストレスを受けているということになります。

ストレスは足し算。小さな刺激であっても、それが重なれば当然、大きなストレスとなります。繁忙期に家族が病気になる、職場が人手不足で負荷が高まっているときに子供が生まれる、といったふうにいくつかの変化や刺激が重なると、それに対応しようとエネルギーをたくさん使います。結果的に、心身や仕事のパフォーマンスに影響が出ることもあるのです。
しかもその状態に、自分では気づきにくいもの。筆者も、ストレスでパフォーマンスがかなり落ちているのに、自分ではそのことに全く気付かず、人に指摘されて初めて気づいたという経験があります。

ココロの元気度を定期的にチェックする

そこで、年に1度のストレスチェックとは別に、定期的に、職場内で「ココロの元気度チェック」のような簡単なテストを行うのはいかがでしょうか。

ある職場では、残業時間が45時間を超えた人にチェックテストを受けてもらっています。ストレスによって生じやすい心身の症状や、人間関係、仕事の状況などについて20ほどの項目が並んでおり、「よくある」「ほとんどない」など4つの選択肢から選ぶようになっています。そしてスコアが高めに出た方に関しては、人事やカウンセラーが面接を行います。
実はこのチェックとその後の面接が、早期発見につながっているのです。自分からは「しんどい」と口にできない人でも、チェックという形でなら表現することができます。「カウンセラーのヒアリングで初めて大変な状況を話せた」という人もいます。
チェックテストを運営するのが大変なら、ココロと体の元気度を10点満点で採点してもらい、毎日報告してもらう、という方法をお勧めします。毎日点数が届けば、ちょっと点数が下がってきたときに様子を聞くことができます。

大切なのは、訴えを待っているのではなく、会社側から声掛け・働きかけを行うということ。日本人は我慢強い人が多いですから、こちらからアプローチをしていくことが重要なのです。
ポジティブな施策も重要ですが、弱音を吐ける場も健康のためには必要です。ストレス要因が多い現代だからこそ、健康経営の一環として、そんな場を提供してさしあげることができたら良いと思います。




【プロフィール】


船見敏子(ふなみ・としこ)

株式会社ハピネスワーキング代表取締役。
公認心理師、1級キャリアコンサルティング技能士、産業カウンセラー。
雑誌編集者を経て現職。産業分野を中心に、組織コンサルテーション、カウンセリング、研修などを実施し、職場のメンタルヘルス向上のサポートをしている。これまでに約1000社、10万人のメンタルケアに携わってきた。著書に『言い返せない人の聴き方・伝え方』(日本能率協会マネジメントセンター)、『幸せなチームのリーダーがしていること』(方丈社)など。

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