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睡眠不足や睡眠の質の低下は、生活習慣病や不調の原因に

現代人は、忙しさのあまり睡眠時間が削られたり、ストレスで眠れないなど、睡眠に関する問題を抱えがちです。睡眠不足や睡眠の質の低下は、さまざまな病気や不調の原因となるだけでなく、集中力や思考力が低下するなど、生活の質も深く関わっています。
睡眠に関する情報を知って、ご自身の睡眠を見直してみませんか?





現代人の5人に1人は睡眠に問題あり

忙しい毎日を送る現代人には、休日は朝寝坊を決め込んでいる人も少なくないのではないでしょうか。それは、日頃の睡眠不足の裏返しかもしれません。
厚生労働省の平成29年国民健康・栄養調査によると、20歳以上の日本人の5人に1人は睡眠に問題を抱えているという結果が出ています。また、平成25年の同調査では「日中の眠気」を週に3回以上感じると答えた人は、男性で33%弱、女性で43%。その他にも、睡眠の質の低下を思わせる調査結果が出ています。


眠りに関する悩みは、年代によっても違います。
「若者は夜更かしで睡眠不足に、働く世代は忙しさによる慢性的な睡眠不足や、睡眠に関わる疾病を抱えるケースもあります。また、シニア世代は過眠による睡眠の質の低下が見られる人が多いようです」と快眠セラピストの三橋美穂さんは指摘します。


睡眠不足は生活習慣病の原因に

「イキイキと活動するために大切なのが睡眠です。睡眠には、脳の疲労回復、記憶の整理、体の疲労回復、傷ついた細胞の修復という体や脳をリセットする大切な役割があります」と三橋さん。
このため、睡眠不足や睡眠障害は、肥満や高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病の原因になることがわかっています。

「睡眠不足になると、食欲を高める『グレリン』というホルモンが増える一方で、食欲を抑える『レプチン』が減るために食べ過ぎてしまい、肥満を招きます」(三橋さん)。
また、血糖値を下げる『インスリン』の働きを悪くして血糖値が高くなったり、交感神経に影響を及ぼし血圧も上がったりもしますし、風邪などの感染症やうつ病のリスクを高めるとされています。

さらに最近では、睡眠と認知症との関係も注目されています。睡眠不足がアルツハイマー型認知症の原因の1つとなっているという報告があるからです。
「脳の中で作られた“ゴミ”のようなもの=アミロイドβは、睡眠中に洗い流されていますが、睡眠不足になるとゴミが十分に排出できないために、認知症のリスクが高まるといわれています」と三橋さん。


睡眠時無呼吸症候群は医療機関で治療が必要

十分な時間ベッドに入って眠っているはずなのに、日中のスッキリ感がない場合には、「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」という病気が隠れている可能性もあります。

SASは、眠っている間に呼吸停止が繰り返されることで酸素が不足し、その酸素不足を補うために心臓だけでなく脳や身体にまで負担がかかり続ける病気です。1時間の間に5回以上無呼吸や低呼吸の状態になるとSASと診断されます。中高年の太った男性に多いのが特徴ですが、下あごが小さい、首が短い、歯並びが悪いなど、首から顔の周りの形が影響するので、痩せた女性でもSASになることがあります。大きないびきをかいていると指摘されたり、寝ている時に苦しい、日中に眠気や倦怠感が強いといった症状があれば要注意です。

主な原因は肥満で、寝ているときに脂肪などで気道が塞がれて起こります。SASになると、心臓病や脳梗塞などのリスクも高まるので、早めに受診することが大切です。
「特に午前10時から午後12時にスッキリと活動できていないと感じるなら、まずは睡眠を見直すとともに、必要に応じて医療機関で診てもらうことが大切です」と三橋さんはアドバイスします。

十分な睡眠時間と質の良い眠りは、生活習慣病などの病気を遠ざけるだけでなく、社会の一員として心身ともに健康で充実した毎日を送るうえで重要な要素です。この機会に、ご自身の眠りについて考えてみてはいかがでしょうか。




<監修者>
三橋美穂
快眠セラピスト・睡眠環境プランナー