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女性の健康支援を厚くするなど、 働き方改革の基盤となる健康経営を目指す



名古屋銀行は今年、経済産業省が推進する「健康経営優良法人2023(大規模法人部門)において、上位500社に位置付けられる「ホワイト 500」に認定されました。ハイレベルな健康経営をどのように導入してきたのか、同行の健康経営推進室の貝瀬繭子さんと宮田愛美さんに語っていただきました。

※「健康経営®」は特定非営利活動法人健康経営研究会の登録商標です。




【会社データ】
株式会社名古屋銀行


創業/1949年
従業員数/1,865名(2022年3月末現在)
業界/銀行業
主な業務内容/銀行業務を中心に、 総合ファイナンスリース業務、受託業務、クレジットカード業務等の金融サービスに係る事業
健康経営をスタートした年/2018年度


貝瀬繭子さん:人材開発部所属
宮田愛美さん:法人営業部所属
坂野亜矢子さん:診療所保健師
鈴木絵美さん:人材開発部保健師 
近藤悠理子さん:人材開発部 管理栄養士
梶田哲男さん:健康保険組合 事務長




組織を横断した専門部署が、健康経営を加速させた

―健康経営への取り組みが始まった経緯について教えてください。

貝瀬 2024年で創業75周年を迎える弊社は、社是「地域社会の繁栄に奉仕する」のもと、愛知県を中心とする地域に密着した金融事業を営んできました。健康経営に着手したのは2018年のこと。地域のみなさんをしっかりと支えていくためには、働いている人間とその家族の健康が大前提だと、からだの健康、こころの健康、職場環境の改善をテーマとした「名古屋銀行健康宣言」を発表しました。

宮田 翌19年には人材開発部内に「輝き方改革推進室」を開設し、名古屋銀行健康宣言に伴う取り組みがスタートしました。ただし、当初は従業員の健康にフォーカスしつつも、ワークライフバランスや女性活躍推進をメインに進めていました。

貝瀬 よりいっそう健康にフォーカスしていくことになったのは2022年6月のことです。輝き方改革推進室の名称を「健康経営推進室」に変更するとともに、人材開発部が事務局となって経営企画部、法人営業部、健康保険組合、診療所などと連携していく体制を作りました。

宮田 貝瀬は健康経営推進室のルーツである人材開発部の出身。一方、私は法人営業部との兼務でもあります。他にもさまざま部署から人材が集められ、それぞれの立場から健康経営の推進にチャレンジしてきました。

貝瀬 輝き方改革推進室時代は人材開発部だけで健康経営を進めていました。当時はどうしてもできることに限界があり、発信力も弱いという課題を抱えていました。しかし、社内横断の組織となった今、より求心力を持ってそれぞれの取り組みが進められる体制ができたと考えています。経営陣も健康経営推進室に期待してくれており、基本的には所属メンバーに舵取りを任せてくれているおかげで、様々な取り組みを進めることができています。


―健康経営推進室の誕生以降、かなり抜本的な改革を進めてこられたそうですね。

貝瀬 いくつかの試みがスタートしましたが、大きな手応えを感じたのは2名の保健師による全従業員の面談です。目に見えづらいストレスや心の問題をいち早く発見し、早期治療に繋げたいとの思いから始めましたが、実際、保健師が面談を通して気になった方に関しては、人事担当や産業医、精神科医、公認心理士などに速やかにトスアップできています。

宮田 正社員は約1,600名、パートを含めると2,000名弱の組織ですから、保健師さんは大変だったと思いますね。

貝瀬 かねてから社内で活躍していた保健師ですが、実は従業員にとってはあまり馴染みのない存在でした。今回、全支店に出向いて、一人ひとりの悩みに寄り添ってくれたのをきっかけに「この人に相談すればいいんだ」という認識が広がったと思います。困ったときに頼りになる、そんな心理的安全性が確保できたのが何よりの収穫でしたね。


女性の健康支援や全面禁煙など、多彩な取り組みを展開

―働き方改革を進めてきた組織が源流だけに、ダイバーシティなどとリンクした取り組みも多いようですね。


貝瀬 健康経営推進室は複数の部会に分かれており、多様性の推進や長時間労働の削減などもその中で進められています。部会の一つであるダイバーシティ部会では、「チームひまわりPlus+」を運営中。以前は「チームひまわり」として現場で働く職員が集まって女性活躍に関する取り組みを進めていたのですが、“Plus+”になってからは、ダイバーシティインクルージョンをテーマに、性別や職歴を問わず、すべての従業員が長く働きやすい銀行を作る試みを進めています。

宮田 その「チームひまわりPlus+」で上がった声をもとにした健康経営の取り組みが、法人向けフェムテックサービスの導入です。

貝瀬 弊社では月経プログラムを採用しており、オンライン診療などを通した女性のサポートを行っています。さらには女性特有の健康の悩みに関する職場全体のリテラシー向上を目指し、管理職に女性の健康の理解を促すセミナーも開催してきました。

―他にはどのような取り組みを進めていますか?

貝瀬 2019年10月から建物・敷地内の全面禁煙を実施していたのですが、22 年 8 月には毎月 22 日を「禁煙の日」にして、さらに同年10 月には就業時間内は全面禁煙としました。もともと喫煙率は12%と他社に比べれば低かったものの、さらに数字を低くするためには思い切った挑戦が必要になったというわけです。目標としては2025年までに喫煙率10%以下の達成を掲げています。

宮田 私は法人営業部の一員として、「健康経営伴走支援コンサルティング」にかかわっています。愛知県内を中心とする企業の健康経営優良法人(中小規模法人部門)の認定取得をサポートする取り組みであり、その発展で健康経営の実現そのもののコンサルティングも行ってきました。「健康経営優良法人2023」では、愛知県を中心に173件の認定取得をサポートすることができました。

貝瀬 お客さま向けの「健康経営伴走支援コンサルティング」が存在していることで、名古屋銀行内部の健康経営推進という意味でもプラスの効果がありました。健康経営というと、関心を持つのは自身の健康が気になる40代以上が中心となりがちですが、コンサルティングという商品として提供する以上、20代、30代の職員も健康経営に関して調べるようになっています。その流れの中で自らが所属する名古屋銀行も、手厚く健康支援を行っていると認識してくれるケースが増えてきました。


病気になっても安心して働ける場を作りたい

―健康経営を進めてきた手応えはいかがですか?


貝瀬 以前は従業員の健康経営に関しての意識がそこまで高くはなかったのが正直なところでした。でも、健康経営優良法人2023で大規模法人部門の「ホワイト 500」に認定されたのが転機となりました。今まで当たり前に取り組んできた健康への取り組みが、世の中的には先端に位置付けられると知ったことで、従業員のモチベーションはおのずと高まっています。

宮田 ですが、課題も出てきました。「健康経営伴走支援コンサルティング」で言えば、特に50人未満の中小企業では健康診断は受診してもらっているものの、その後の再検査までは進まないとの悩みがあるようです。今回、大塚製薬さんとコラボレーションすることになりましたが、世の中に“健康を考えながら働いていく”という視点を普及させるために、一緒になって頑張っていきたいと気持ちを新たにしています。

貝瀬 実は名古屋銀行内部でも同様で、健康診断を受けた後の数値改善ができているかといえば、まだまだ物足りないのが現状です。この点の改善は明確に行わなくてはなりませんが、対応する試みの一つとして、所属長向けにガン・不妊治療などと仕事の両立を考えるセミナーを開催しています。病気を抱えている方は「このまま働き続けられるだろうか」と不安を感じながら仕事をしています。これをきっかけに、理解ある職場作りを進めていきたいと思っています。


―これから健康経営に取り組みたい企業へアドバイスをお願いします。

宮田 健康経営というと、どうしても難しく考えてしまいがちですが、身近なところでの改善から始めても十分です。視野を広げて健康経営を捉えてほしいと思います。

貝瀬 先日、名古屋銀行の従業員向けの体力測定を実施したのですが、「1日30分以上運動をしていますか」との問いに対して、大多数が「NO」と答えていました。しかし、「1日何歩、歩いていますか?」と問うと「1万歩以上」という人がかなりの数に上りました。自分では意識していなくても、仕事をしているだけでかなりの距離を歩いている人が多いんですよね。思いがけないところで実践できているケースもあるので、気負うことなく、試せることから取り入れてみましょう!




【プロフィール】

 


貝瀬繭子さん
人材開発部所属。採用・退職・休職等人事業務に従事している。2021年に両立支援コーディネーター認定、2022年不妊症・不育症ピアサポーター登録。



宮田愛美さん
法人営業部所属。普段は取引先企業の健康経営の取り組みを支援するコンサルティングを展開している。2023年に健康経営エキスパートアドバイザー認定を受けている。
 

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