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「健康経営」に本気で取り組み始めた、日本青年会議所 北海道地区北海道ブロック 一般社団法人砂川青年会議所の理由と凄み



2021年4月、砂川青年会議所が「健康経営®」をテーマにしたセミナーを実施しました。セミナー後、「健康事業所宣言」をする会員がいるなど、好評のうちに終了。なぜ、砂川青年会議所は「健康経営」をテーマに掲げることにしたのかを主宰した江畑直人さんと、2022年度理事長の櫻井康貴さんに伺いました。

※「健康経営®」は特定非営利活動法人健康経営研究会の登録商標です。
※「健康事業所宣言」は、事業所が自社の健康づくりの取組み目標を社内外に宣言し健康経営に取組むことです。




【2人のキーパーソンを紹介】


江畑直人(えばた・なおと)
2021年度一般社団法人砂川青年会議所副理事長。1983年生まれ。砂川市で産業廃棄物最終処分場のリサイクル事業などを手掛ける株式会社栄進の代表取締役。2021年4月の例会に健康経営セミナーを主催した際の企画提案者。


櫻井康貴(さくらい・やすたか)
2022年度一般社団法人砂川青年会議所理事長。1983年生まれ。空知郡奈井江町で70年以上の歴史を持つ土木建築会社、株式会社櫻井千田の代表取締役社長。今回のセミナーを機に「健康経営」を実践している。

【はじめに】北海道砂川と健康意識の背景

北海道砂川市は人口約1万6000人と、決して大きくはありません。しかし市民一人あたりの都市公園面積が日本一広く、20店ほど点在するお菓子屋さんを「すながわスイートロード」と名付けて盛り上げるなど、個性と魅力にあふれた地域。また「健康寿命の延伸」と「健康格差の縮小」を目指して、自治体も健康づくり活動を推進しています。

一方、コロナ禍で、インバウンド客が激減し、元気のない状況が続いていました。「今、砂川青年会議所はどんな例会を実施していくべきか」と、砂川青年会議所は頭を悩ませていました。

【健康経営セミナー実施の背景】年間スローガン「笑顔」が起点に



―2021年4月例会で「健康経営」セミナーを開催した経緯を教えてください。

江畑 砂川青年会議所では毎年、活動の指標となるスローガンを掲げています。2021年のスローガンは“笑顔”でした。

そこで私が企画者となる4月の例会は、このスローガンに即したテーマであること。またコロナ禍という背景も踏まえ、“健康”をテーマにした例会にしようと考えました。
人は健康だからこそ“笑顔”になれます。コロナ禍で健康の大切さをあらためて実感したからこそ健康をテーマに取り上げるのは意義があると思いました。

―当初は、「健康」がテーマで「健康経営」ではなかったのですね。

江畑 はい。会員メンバーに対して自分自身の健康管理をうながす勉強会を想定していました。コロナ禍前は、例会後に懇親を深める意味合いもあり会員メンバーとともに夜遅くまでお酒を飲むことが多く、健康への意識はあまり高くなかったので。

ただ、健康をテーマに掲げたのはいいけれど、「誰がどのように健康知識を伝えるか」が課題でした。私は健康の専門知識を持っているわけではないので。会員メンバーに薬剤師がいたので、その人に講師ができないか打診しました。しかし、本人から参加者にしっかり伝えられるかという点で不安があると言われ、私自身どうしようかと悩んでいたんです。

そんな中、日本青年会議所2021年度京都会議の事業セミナーで「健康経営の推進」を訴える話があり、そこではじめて「健康経営」という言葉を知り、「コレだ!」と膝を打ったのを覚えています。

―そして、「健康経営」を例会のテーマの1つにしたのですね。



江畑 はい。日本青年会議所のそのウェブセミナーを主催していたクオリティ国家戦略会議の担当者に「健康経営」をテーマに砂川青年会議所も例会をしたいと相談しました。
というのも、「全国どこでも、健康経営に知見のある大塚製薬がバックアップしてくれる」と、セミナーで言っていたからです。

その後、大塚製薬札幌支店の担当者につないでいただき、「砂川青年会議所の例会で健康経営をテーマに扱いたい」と相談しました。健康と健康経営に関するエビデンス、ノウハウを持つプロフェッショナルの大塚製薬に参画してもらえ、例会の形が一気にクリアに形になった気がしましたね。

33名が参加し、80%以上が「わかりやすい」と評価したセミナー

―セミナー内容は、どのように決めていったのでしょうか。



江畑 はい。大塚製薬札幌支店の担当者から、まずは自分が健康経営についての考え方を伺い、それを踏まえて、こちらから要望も出し、セミナー内容のご提案をしていただきました。

―具体的にどのような要望を出したのですか?

江畑 こちらから事前に出した要望は2つです。

1つは「健康の3原則である栄養・運動・休養についてわかりやすく教えていただきたい」ということ。もう1つは「質問やアンケートを取り入れて、インタラクティブなセミナーにしたい」ということです。

―なぜ「健康の3原則」にフォーカスしたのでしょうか?

江畑 栄養だけ、運動だけ、と3原則を一つずつピックアップしても例会のセミナーとしては十分な質とボリュームが出せます。

しかし、青年会議所は40歳までと年齢制限もあり、出入りが激しい。ですから健康の基礎知識と、健康経営の全体像を一回のセミナーでつかんでいただき、今後、継続的な健康経営関連の例会の下地にしていきたいという思いがありました。

―もう一つの「質問を多く取り入れてほしい」を提案された理由はなんですか?

江畑 講演形式だけのセミナーは、聞き流される可能性が高いと感じていたからです。参加意識を持ち、自分ごととして、健康や健康経営についての知識も理解も深めてもらいたいと考えました。
「3原則をわかりやすく…」という要望とともに多少、わがままなお願いをしてしまいましたが、大塚製薬の担当者には柔軟に対応いただけてよかったです。

―セミナーは2021年4月7日に市のコミュニティセンターで開催したそうですね。

江畑 はい。参加者は砂川青年会議所メンバー全38名のうち、33名が参加しました。参加率が高くてホッとしましたね。コロナ禍もあり、オンラインとオフラインのハイブリッド開催にしたのもよかったです。6名の方はオンラインでの参加でした。

―当日の手応えはいかがでしたか?

江畑 大いにありました。アンケートでも「非常に理解できた」と答えてくれた方が51.6%、「理解できた」が32.3%と、狙いどおりの結果でした。

感想のコメントにも、「個人だけではなく、一緒に働いている仲間も健康になれるのはすばらしいと思いました」「説明資料やアンケートも取り入れてくれたおかげで楽しく学べました」といった声があり、好評でした。本当にやった甲斐がありました。

―セミナー以降、何か会員の言動に変化はありましたか?

江畑 そうですね。後日、別の例会で、雑談の中に「健康経営」の言葉が聞こえてくるようになりました。「何か体にいいことしている?」とか「会社として健康経営に取り組んでいるか」といった感じで。

いちばん驚いたのは、櫻井理事長が、セミナー直後に健康事業所宣言をされて、すぐさま自社で健康経営に取り組んだことです。

―櫻井さんの行動をみて、どう思いましたか?



江畑 健康経営の意義を理解してもらえれば、アクションするのだと実感しました。2021年は4月のみの開催でしたが、今後、例会の定番テーマとして続けていけたらと思います。青年会議所の会員メンバー以外の、地域の人たちにも健康や健康経営の知識を共有していけたらいいですよね。

健康な“人づくり”、健康な“企業づくり”が、元気で“笑顔”あふれる街づくりにつながっていったら最高だと思います。

【健康経営に取り組む企業の声】投資をするなら社員の健康に!

セミナー直後に健康経営を実践した、砂川青年会議所2022年度理事長で株式会社櫻井千田代表の櫻井さんにもお話を伺いました。



―4月のセミナー直後に健康経営のファーストステップとなる「健康事業所宣言」をされたそうですね。

櫻井 はい。「社員の健康に投資する」という健康経営の考え方に共感し、セミナーの感想を述べる場で思わず「健康事業所宣言します!」と言っていました(笑)。

私は、土木工事を中心とした建設業を営み、会社には50名ほどの社員がいます。多くは、40代~60代です。ただ、ここ数年、基礎疾患を患ったり、入院療養を余儀なくされる社員が出て、検診や再検査、人間ドックを受けるよう、会社としても促していましたが、責任感が強い社員ほど「仕事が忙しい」と理由をつけて、自分の健康は後回しにするという現状に課題を感じていました。

―社員の意識を変えたいと、以前から考えていたのですね。

櫻井 そのとおりです。社員は大切な仲間であるとともに、ご家族の顔も浮かぶ関係ですからね。それに、病気や体調を崩した状態では、業務にも支障が出てきます。会社の経営的視点からはもちろん、一人ひとりの豊かな生活、Well-beingの観点からも、全社員の健康維持のために“投資”をすることは、必要だと感じました。 

―実際、健康経営はどのように導入したのでしょうか?



櫻井 セミナーをお願いした大塚製薬の担当者に、社内で実施するセミナーの企画提案をしていただき、月1回でオンラインセミナーを半年間、実施することになりました。
「なぜ健康経営に自分の会社が取り組むことになったのか」という根底の概論はもちろん、睡眠や熱中症対策といった、従業員が自分ゴトとして、興味を持ってくれそうなテーマを設定しています。

特に、女性向けの月経やPMSなどを扱うセミナーは、男性比率が高いこともあり、中々知る機会が少ないので、全6回のうち2回を占め、力を入れています。

―女性向けのセミナーを重視した理由はなんですか?

櫻井 女性社員から「女性向けのカリキュラムも用意してほしい」と要望があったからです。
健康経営セミナー実施の決定後、社内の「人材育成委員会」という部署で、何をするか内容を詰めていったのですが、そこに参加していた女性社員が、「うちには5人しか女性社員がいないが、だからこそ女性の健康について男性社員も理解してくれたら、みんなの働きやすさにつながるはずだ」と発言したのです。

女性が働きやすい会社は採用にもつながるはずと考え、女性の健康に関するセミナーに力を入れました。

―従業員のみなさんはセミナー後、変わりましたか?

櫻井 社内のコミュニケーションの中で、「腹筋ローラーをはじめた」とか「揚げ物ばかりだとバランスが悪いから、今日は野菜を多めにしよう」といった健康の会話が社内で少しずつ増えています。

そもそも業務上、現場での仕事が多く、コミュニケーションが希薄になりがちだったので、飲み会などで部署を超えたコミュニケーションをとるようにしていました。ですが、コロナ禍で飲み会がしにくい状況に……。そんな状況下で、「健康」という共通の話題は話しやすいのだろうと感じています。

―健康経営の取り組みに関して、今後のビジョンはありますか?

櫻井 6回のセミナーを終えて、短期間でひとつのテーマに対して全社員への研修をするという機会が初めてで、社員の健康推進に向けての本気度ということも伝わったのか、社員間の日常会話でも健康に気を遣う言葉が以前に比べてたくさん出てきており、意識が高まっていることを実感しています。今後もより具体的な取組みを増やし健康経営を推進していきます。
そして、会社として健康経営の質を高めて、経済産業省の認定制度において特に優良な健康経営の取組みを行っている法人として健康経営優良法人「ブライト500」の取得を目指したいです。

とはいえ、一番の願いは、社員がより幸せで、豊かな生活を送り続けること。それが会社にとって一番大切なことですから、実現し続けたいです。