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【連載第14回】メンバーの本音に耳を傾ける時間をもつ

健康経営を進める上で、心理的安全性は欠かせません。話題の心理的安全性を高めるには、どのような工夫が必要なのでしょうか。ある企業の事例を通じて、その秘訣をご紹介します。

この連載では、公認心理師として多くの企業でメンタルヘルス対策のサポートをしている株式会社ハピネスワーキングの船見先生に、メンタルヘルス向上の具体策をご紹介していただきます。




 


どうすれば心理的安全性を作れるのか
心理的安全性という言葉を、このところよく耳にします。心理的安全性とは、意見や考えを言ってもバカにされない、拒否されないという安心感があること。また、健全に議論を戦わせられること。これらの要素が保たれた職場のことを言います。Google社が、生産性の高いチームに共通することを調査した結果、導き出されたのが、この心理的安全性だったのです。

誰もが自由に意見を述べ、それを受け入れてもらえ、チーム運営に携われるという実感をもてるのは、生産性を高めるだけでなく、個人と組織のウェルビーイングにおいても、大変重要なことです。
しかしながら、今なお忖度文化が残る日本では、上司に意見など言えない、不満があってもガマンするしかないと考えている人はまだまだ多いものです。言いたいことが言えずに苦しむ若手にもカウンセリングでよく出会います。
では、どうしたらこの日本でも心理的安全性を作れるのでしょう。私が過去にコンサルティングをした企業の事例がヒントになりそうです。
管理職がメンバーの意見をただただ聞く
ある金融機関の支店の事例です。ストレスチェックの結果を用いてのコンサルテーションを行ったのですが、その支店は他店と比較して突出して結果が良好だったのです。そこで、支店長にどんな施策を行っているのか聞きました。すると、驚くような話が飛び出しました。

支店長就任後、新しく取り組み始めたのが、メンバーの話を聞く会。毎月1回、業務終了後に支店のメンバー全員を集め、意見を聞く会を行っているとのことでした。会議室にメンバーがずらりと並んで座り、対峙するように管理職が座ります。
メンバーは、不平不満愚痴、何を言ってもOK。管理職は一切、反論や意見を言わず、ただただ耳を傾ける……想像しただけで緊張感を覚えますが、そんな会を2年近く継続してきているとのことでした。
「メンバーは本音を言えるのでしょうか?」
素朴な疑問をぶつけたところ、支店長はこう答えてくれました。

「もちろん、はじめのうちはほとんど意見を言ってくれませんでした。こちらの腹の内を探っているような、そんな印象もありました。でも、それでも会を続けると、少しずつ意見を言ってくれるようになっていったのです。今ではかなり辛辣な意見も出ますよ」

メンバーからから出た意見は、できる限り職場改善に反映させているとのこと。それもなるべくスピーディに。
“言えば、応えてくれる。自分たちでチームを作っている。”
そんな実感が、メンバーの心に芽生え、心理的安全性が醸成されたのでしょう。ストレスチェックの結果は全体的に非常に良かったのですが、特に人間関係に関する項目は驚くほど高い数値を示していました。

メンバーが何を思い、考えているのかを、リーダーの皆さんはどれだけ把握していますか? 「意見を聞くよ」と言いながら、暗に圧力をかけているということはないでしょうか。せっかく意見が出てきたとしても、「戯言だ」と片付けていないでしょうか。
メンバーの本音を聞くのは勇気がいることです。しかしそれをしなければ、安心できる職場など作れるはずはありません。3か月に1度でも、半年に1度でもいいと思います。従業員の心に耳を傾けてみてはいかがでしょうか。



【プロフィール】


船見敏子(ふなみ・としこ)
株式会社ハピネスワーキング代表取締役。
公認心理師、1級キャリアコンサルティング技能士、産業カウンセラー。
雑誌編集者を経て現職。産業分野を中心に、組織コンサルテーション、カウンセリング、研修などを実施し、職場のメンタルヘルス向上のサポートをしている。これまでに約1000社、10万人のメンタルケアに携わってきた。著書に『言い返せない人の聴き方・伝え方』(日本能率協会マネジメントセンター)、『幸せなチームのリーダーがしていること』(方丈社)など。

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