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誰かに話したくなる頭痛のトリビア8

記事作成者:大塚製薬株式会社 メディカル・アフェアーズ部 CNSグループ 神経領域

頭痛は、「たかが頭痛」と言われがちで、その痛みやつらさを周囲に理解されにくい病気です。ここでは、少しでも頭痛への理解を深めるための、目からウロコな頭痛のマメ知識を、頭痛の専門医である梅ノ辻クリニック院長・山田洋司医師に伺いました。

<監修>
山田 洋司 医師(梅ノ辻クリニック 院長)

1981年、神戸大学医学部卒業後、脳神経外科医として様々な病院で数多くの手術を手がける。2001年、高知市にある梅ノ辻クリニックの院長となり、現在に至る。日本頭痛学会専門医・日本脳神経外科学会専門医。著書に『頭痛が治る、未来が変わる!』(三宝出版)がある。




【頭痛トリビア1】頭痛にも「個性」がある


多くの人が一度は経験したことがある頭痛。日常的に頭痛があっても、それを病気だとは考えず、本人も周りの人も「たかが頭痛」と軽視して、我慢することが普通だと放置してしまいがちです。

しかし頭痛には300種類以上のタイプがあり、原因や症状、適した治療薬も十人十色。日常生活に支障がある場合は、頭痛外来を受診し、正しい診断と適切な治療を受けることが重要です。

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【頭痛トリビア2】ハンマーで殴られたような“命に関わる”頭痛を未然に防ぐ方法がある


頭痛には、片頭痛や緊張型頭痛など頭痛自体が病気である一次性頭痛と、何らかの疾患に伴って起こる二次性頭痛があります。二次性頭痛は、命に関わるものがあり、代表的な病気が、くも膜下出血。ハンマーで突然、頭を殴られたような頭痛が生じます。ただし、痛みが軽くてもくも膜下出血だったというケースもありますので、突然起こった頭痛には注意が必要です。ほかにも、髄膜炎や脳腫瘍など、頭痛以外にめまいや発熱などを伴う危険な病気もあるので、いつもと違う頭痛を感じたり、気になる症状があれば、できる限り早く病院を受診しましょう。

また、二次性頭痛を予防するという意味では「脳ドック」も有用です。例えば、くも膜下出血は脳の動脈瘤が破裂することによって起こりますが、頭部MRI検査によって未破裂の動脈瘤を見つけることも可能です。今は技術が発達し、安全に検査できるので、一度脳ドックを受けてみるのも一案です。


【頭痛トリビア3】頭痛持ちは「まぶしい」ところが苦手!?


片頭痛患者さんは、痛みだけではなく、感覚過敏により吐き気や嘔吐、普段は気にならない光・音・においを不快に感じることがあります。

感覚過敏の中で最も多いのは、光過敏。片頭痛発作が起きると、日射しや照明だけでなくパソコンやスマホの画面でさえもまぶしく感じ、暗いところにこもりたくなります。そのため、日常的にサングラスやブルーライトカット眼鏡を愛用している人も多くいます。ちなみに、緑色は片頭痛患者さんにも優しい色と言われています1)。

光過敏以外では、テレビの音や子供の声などが頭に響く音過敏も多く、タクシーやバスなどの乗り物のにおい、香水や柔軟剤などの人工的な香りがダメだという人も。そして、これらの光・音・においは頭痛発作の引き金になる場合もあります。

身近に頭痛で悩んでいる人がいたら、光、音、においのどれに過敏に反応するかを聞き、配慮してあげるのもいいでしょう。


【頭痛トリビア4】「薬」をとるか「痛み」をとるか、究極の選択に悩む人がいる


市販薬・処方薬を問わず、頭痛薬を飲み過ぎると、そのこと自体が原因となって、余計に頭痛を悪化させることもあります。3カ月以上にわたり、月に10日以上服用している場合は注意が必要です。「薬剤の使用過多による頭痛」の治療には、原因となる薬の服用を減らしたり、中止したりするのが有効ですが、服薬しないと仕事や生活に支障をきたすため、使用過多と知りながら日常を過ごす人がいるという実情もあります。

とはいえ、やはり薬の飲み過ぎがいけないのも事実。頭痛を予防するという方法もあるので、飲み過ぎが気になる人は医師に相談しましょう。


【頭痛トリビア5】妊娠すると頭痛が軽くなる!?


すべての方に当てはまるわけではないですが、妊娠中は頭痛が軽くなり、出産後に再び元に戻るというパターンが一般的です。なぜなら、片頭痛は特に20〜40代の女性に多く、「女性ホルモン」が深く関与していると考えられているからです。そのため、生理前や生理中、排卵日などに頭痛が起こる人は相当数います。

患者さんの中には、月経時に起こる片頭痛を「生理痛の一種」だと考え、自己判断により鎮痛薬で対処する人もいますが、月経時の片頭痛は重症度が高いケースが多く、鎮痛薬が効きづらいこともあります。鎮痛薬を過剰に服用すると、かえって頭痛が悪化する場合がありますので、自己判断せずにまずは病院で適切な診断・治療を受けることが大切です。


【頭痛トリビア6】重度の片頭痛は、人を“石”に変えてしまう


4人に3人が「日常生活に支障をきたしている」と回答した調査2)があるほど、ひどい痛みに襲われることがある片頭痛。重症になると、月に10〜15日ほど「ひどい頭痛に加え、吐き気や嘔吐などで、まったく動けない」という状態に陥ることも。ズキンズキンと波打つような痛さは、頭をほんの少し振ることも頭を上げることも難しく、まさに“石”のようにジッとして、痛みが治まるのを待つしかないと訴える患者が多くいます。

痛みで動けなくなる片頭痛とは対照的に、目の奥をキリで揉まれるような激しい痛みで転げまわってしまう群発頭痛というタイプもあります。

【頭痛トリビア7】空腹で頭痛が起こる?


ストレスや不規則な生活、月経など、頭痛の誘因は多種多様ですが、実は「空腹」で頭が痛くなる人は、意外といます。空腹がきっかけとなったり、頭痛発作時に空腹が重なると、痛みが悪化するパターンはよくあります。そんな時は、空腹の状態を作らないようセルフコントロールするとよいでしょう。ちなみに、チョコレートの食べすぎは頭痛を引き起こす可能性もあるので、体質に合わせた注意が必要です。

自分の頭痛にはどのような傾向があるのか、頭痛発作が起きたタイミングをメモしておくと、セルフコントロールのヒントになります。


【頭痛トリビア8】芥川龍之介の『歯車』も樋口一葉の『たけくらべ』も頭痛のウラで生まれた


日本で慢性頭痛に悩んでいる人は約4,000万人と、とても身近な病気ですが、実は皆がよく知る偉人たちも頭痛持ちだったと言われています。

中でも有名なのは、芥川龍之介。自身を主人公とした私小説『歯車』を読むと、頭痛持ちだと思われる描写が登場し、タイトル自体がまさに片頭痛の視覚性前兆を表しています。ほかにも、『たけくらべ』の著者である樋口一葉は、頭痛発作が起きた際にはハチマキを強く巻いて執筆していたそうですし、夏目漱石も小説の内容から頭痛持ちだったと言われています。

頭痛を持っているとどうしてもネガティブな気分になりますが、偉人たちも頭痛に苦しんでいたと知ると、「悩んでいるのは自分だけじゃない」と少しは心が軽くなるかもしれません。頭痛の描写に注目しつつ、彼らが生み出した名作に触れてみてはいかがでしょう。




≪監修医プロフィール≫


山田 洋司
医療法人防治会 梅ノ辻クリニック 院長
日本頭痛学会専門医・日本脳神経外科学会専門医


昭和56年 3月 神戸大学医学部卒業
昭和58年 4月 国立療養所香川小児病院 勤務(脳神経外科)
昭和61年 1月 兵庫県立姫路循環器病センター 勤務(脳神経外科)
昭和62年 4月 兵庫県立成人病センター 勤務(脳神経外科)
平成9年 4月 医療法人防治会 梅ノ辻病院 院長
平成13年 7月 医療法人防治会 梅ノ辻クリニック 院長 
現在に至る
主な著書              頭痛が治る、未来が変わる!(三宝出版)

≪出典≫
1) R, Noseda et al. : Brain. 2016 ; 139 : 1971–1986.
2) Sakai, F. et al.:Cephalalgia. 1997;17(1):15-22.