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【前編/健康経営編】少人数だからこそ社員といっしょに育む健康経営

従業員の健康”を経営戦略ととらえる「健康経営」。課題解決に向け、着手している経営者のお話を伺います。今回は、小規模ながら積極的に健康経営を進めるメディプライム株式会社、代表取締役の河野弘幸さんに、取り組みについて聞きました。





きっかけは従業員のための就業規則作り



■メディプライム株式会社、代表取締役の河野弘幸さん
「私たちの仕事は、医療にかかわる全ての人をICTでつなぐことですが、効率化や省力化だけでなく、より良い環境を継続させる運用の工夫が重要です。それは会社経営も同じ。社員が気持ちよく働ける環境を、提供し続けることが経営者である私の仕事だと思っています」

【メディプライム株式会社を紹介します】
設立/2011年4月(創業/2010年10月)
社員数/8名(2020年11月現在)
業界/医療支援サービス業
主な業務内容/医療情報システム分野でのシステム導入・インフラ構築・運用サポートと、医療機関のサービスデスク運営。
健康経営をスタートした年/2016年


「健康経営」の活動として、乳がん検診全額補助や定期健診のオプション検査費用100%補助をはじめ、いくつかの制度をスタートさせています。また、2018年の健康企業宣言を皮切りに健康優良企業「銀の認定」や経済産業省の「健康経営優良法人2020」を取得するなど、公的機関にも当社の取り組みを認めていただいています。


■全国健康保険協会(協会けんぽ)による健康経営を推進する企業へのサポート事業「健康起業宣言」で、メディプライム株式会社は健診受診率100%をはじめ5つの宣言をしている

こう言うと、健康経営にすごく力を入れていると思われるかもしれませんが、私自身は特別なことをやっている感覚はありません。社員が安心して働くにはどうしたらよいかを考え、環境を整えていった結果が健康経営に結びついたと言った方がしっくりします。
活動のきっかけは5年前に社員が増えた時でした。家庭環境や性別も違う社員に気持ちよく働いてもらうには、当社ならではの就業規則が必要と感じ手作りしたのです。同時に3人の社員と私とで、職場環境と現行の社内制度を考えるプロジェクトを立ち上げました。


社内プロジェクトが社内の健康支援制度のベースに

プロジェクトから生まれた最初の制度が介護休暇制度です。社員にアンケートを取ると、将来的な介護と仕事の両立に不安を感じる社員が多かったため、介護休暇を拡充したのです。また、個別ヒアリングや公的介護保険制度の社内研修を定期的に行うことで、状況把握や継続的な情報提供を行えるようにしました。時短勤務の導入や在宅勤務の環境整備もし、その他には乳がんの早期発見や感染症対策など、社内プロジェクトで抽出された身の回りの課題をベースにするなど、当社らしい健康支援制度が積み上がったと感じています。



社内プロジェクトは、制度の運用推進も担いますが、同時に、社員自らが健康経営に携わっていると実感する場にしたいとも考えました。そのため、月1回の定例会ではメンバーが中心になって話し合った結果を資料として「回覧」し、全員に共有しています。私の出番は、回覧作成などが時間的に難しい時のフォロー程度です。
成果の現れか、関西の取引先に常駐する社員からも回覧へのフィードバックがあり、社内の一体感が醸成されているようです。その結果、創業から10年間で離職者は、専門技術を深めたいと移られた1名だけです。みんなの健康意識を高めることで健康経営の継続や、社員に役立つ制度ができ、私の想いも浸透しているのだと実感しています。

 
■社内プロジェクトで作成した「回覧」(右)。オフィスでの簡単なストレッチ方法から、自社の健康経営の取り組みまで内容は幅広い。今年は、新型コロナウイルス対策の話題が多かったそう。


小さな原資でも持続的な健康支援の提供を可能に

当社ではいくつか補助金制度を設けています。社内制度に利用する補助金の原資は、営業利益の3~8%を目安としていますが、従業員も多くはないので最大限に利用してもさほど大きな金額になることはありません。しかし、補助金制度のおかげで、健康診断で再検査が出た社員に「再検査したほうがいいよ」と声をかけやすくなり、実際、再検査につながったケースがありました。他にも、家族全員のインフルエンザ予防接種受診率も高く、健康経営の継続を支えていると感じています。
また、小さな原資で継続的に社員に満足してもらえるよう工夫したのが、エコ通勤手当です。勤務先が近く自転車や徒歩のみで通勤する従業員に、通勤手当の代わりに月3千円を支給する制度で、社員からは「健康促進で自転車通勤するのに手当が出るなんて聞いたことがない。画期的だ」と喜ばれおり、効果が期待できます。
健康も経営も、一過性のものであってはなりません。未来につながる健康経営にするために、今後は現在の制度の利用促進や効果測定をして、さらに継続的なものに成長させることが課題です。


健康への意識の変化が病欠の削減に
現在の社内プロジェクトメンバーにひと言いただきました。
 




左:網代恵美さん「自分の健康は後回しということが多かったのですが、プロジェクトに参加して意識が変わりました。今は体のメンテナンスを大切にしています」
中央:林竜一さん「当社に入社するまでインフルエンザの予防接種を受けたことがありませんでした。今は補助金制度を利用して、早めに受けるようにしています」
右:谷末絹子さん「前職も同様の仕事をしていましたが、当社の欠勤率の低さには目を見張ります。思えばここ数年、病気で休んだ人はいない気がします」



<プロフィール> 


メディプライム株式会社
代表取締役 河野弘幸

1965年兵庫県生まれ。HAL大阪の医療学科卒業後、SIer企業に入社。日本初の電子カルテシステム開発プロジェクトをはじめ、がん専門、中規模病院など多種な病院でのシステム設計、導入・支援に従事。医療PFI(※)での情報化整備の経験を経たのち、2010年に独立。翌11年、「医療に関わる全ての人とICTを繋ぐ」を理念にメディプライム株式会社を設立。医療情報技師
※PFI:Private Finance Initiativeとは、公共施設などの建設や維持管理を、民間の資金、経営能力、技術的能力などを活用して行う新しい手法(内閣府のPFIサイト参照)