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花粉症が企業に与える影響とは?職場でも花粉症対策に取り組もう



近年、花粉症にかかる人が急増しているといわれています。その原因の一つと言われているのが、地球温暖化による花粉飛散量の増加です。特に、2023年は夏の猛暑が続いた影響で、2024年の春は、全国的に例年よりも花粉飛散量がやや多くなると予測されています(日本気象協会の「2024年 春の花粉飛散予測(第1報)」より)。また、花粉といえば春に飛散するイメージがありますが、春以外に花粉を飛ばす植物もあり、年間を通じて症状に悩まされてしまう方もいるのではないでしょうか。

花粉症の症状が重い場合、業務に支障をきたしてしまう従業員がいるかもしれません。花粉症について理解を深め、職場でできる対策について考えてみましょう。

花粉症による経済的損失


花粉症の主な症状はくしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどですが、それ以外にも、体のだるさや疲労感、集中力の低下、イライラするなど、さまざまな症状が複合的に表れます。個人差はあるものの、これらの症状により、QOL(生活の質)が低下し、いつもどおりのパフォーマンスが発揮できなくなる人も少なくありません。こうした従業員が増えると、企業の生産性にも影響する場合があり、花粉症を含むアレルギー性鼻炎による経済的損失は、高度のストレスや片頭痛、うつなどの疾患を上回るというデータも確認されています。

また、令和5年5月、「花粉症に関する関係閣僚会議」において、企業における従業員の花粉暴露対策が求められました。それを受けて、毎年、経済産業省が認定している「健康経営優良法人(※)」の評価項目に、「花粉症に対する具体的な支援」が追加されたことからも、企業で花粉症対策を行うことの重要さがわかります。

※健康経営優良法人…地域の健康課題に即した取り組みや日本健康会議が進める健康増進の取り組みをもとに、特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業等の法人を顕彰する制度

花粉症とは


人間の体は、体内に異物(花粉、ウイルス、細菌など)が侵入してくると、その異物に対して抗体を作り、再び侵入してきたときに無害化しようとする免疫の仕組みとして「抗原抗体反応」があります。この反応が起こる際にくしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの症状が現れる病気をアレルギー性鼻炎といいます。このうち、花粉により引き起こされるアレルギー性鼻炎を「花粉症」と呼びます。

しかし、スギ花粉を吸い込んだ際、誰もが花粉症を発症するわけではありません。アレルギー反応を起こしやすいアトピー体質や、空気中の汚染物質、食生活の変化などの様々な要因が花粉症の発症に影響を与えていると言われています。また、環境省が公表している『花粉症環境保健マニュアル2022』によると、1998年の花粉症の有病率は19.6%でしたが、2008年は29.8%、2019年は42.5%と、10年で約10%のペースで増加しており、花粉症に悩まされる人は年々増加していることが分かります。

基本的な花粉症対策


花粉症対策として、症状を和らげたり、発症を遅らせたりするために、花粉症の原因である花粉の侵入をいかに避けるかが重要です。一年を通してさまざまな植物の花粉が飛散していますが、なかでも、特に患者数が多いのが春に症状が出やすいスギ花粉症です。スギは雄花の中に花粉が作られ、スギの成長の度合い、雄花の量から翌年の花粉飛散量を予測することが出来るため、10月中旬頃から翌年の飛散量が予測され、ニュースなどで発表されます。こまめに花粉飛散情報をチェックすることも心がけてみましょう。
ここからは、個人と企業それぞれの基本的な花粉症対策を紹介いたします。

個人でできること
できるだけ花粉との接触を避けるためにできることとして、次のような方法が挙げられます。
▷マスクをする
▷メガネをかける
▷花粉が付着しにくい服を選ぶ
▷家の中に入る前に服やカバンをはたく
▷帰宅したら手洗い+洗顔
▷室内はこまめに掃除+換気する
▷花粉の飛散が多い時間帯(昼前後、夕方)の外出を避ける

なかでも特に重要なのが、マスクとメガネの着用です。マスクを着用すると、着用なしと比較して90%以上の花粉をカットすることが出来るといわれています。また、一般的なメガネの着用で、鼻や目に入る花粉の量を1/3以上、花粉症用のメガネなら2/3以上の花粉をカットすることが出来るというデータもあります。これらの基本的な対策に加え、正常な免疫機能を保つために、規則正しい生活習慣を心がけることも大切です。

企業ができること
従業員の健康を守るために企業ができる花粉症対策としては、次のような取り組みが挙げられます。
▷対症療法(花粉症の症状を抑えるための治療)に対して補助・支援する
▷根治療法(花粉症を完治させるための治療)に対して補助・支援する
▷職場において花粉症対策を実施する(例:空気清浄機を設置する)
▷花粉飛散量が多い日の出社を避けられるよう、柔軟な働き方を導入する
▷従業員に対して、花粉症に関するセミナーや教育を実施する

上記の取り組みは、先に紹介した健康経営優良法人認定制度の評価項目に、「花粉症に対する具体的な支援」として記載されています。

腸から始める花粉症対策


「冬に気をつけたい体調管理」の記事でもお伝えしたとおり、免疫細胞のうち70%が腸に存在していると言われています。また、腸内細菌には消化吸収の補助や免疫刺激など健康維持に影響を及ぼす「善玉菌」カラダに悪い影響を及ぼす「悪玉菌」、普段はおとなしいものの、悪玉菌の数が増えると悪い影響を及ぼす「日和見菌」があります。
これらの菌はおおよそ善玉菌:20%、悪玉菌:10%、日和見菌:70%のバランスが保たれていますが、善玉菌・悪玉菌・日和見菌のバランスは体調や年齢によってバランスが変わってしまいます。善玉菌や悪玉菌などの腸内細菌のバランスが崩れると、免疫のバランスも乱れがちになり、これがアレルギーを引き起こす要因の一つといわれています。そのため、腸内環境を整えることは花粉症対策の一助になるとされていて、善玉菌のえさとなる食物繊維やオリゴ糖などを含む食品を普段の食事にとりいれてみることもおすすめです。

花粉症対策と乳酸菌
乳酸菌とは糖類を分解して乳酸をつくる細菌の総称で、これまでに約300種類の乳酸菌が発見されています。乳酸菌はヒトや動物の体の中をはじめとして、様々な場所に存在しており、どこから発見されたかにより動物由来と植物由来のものに分けられます。

乳酸菌の働きによる発酵は酸味や旨味を生み出すだけでなく、雑菌の増殖を防いで保存性を高める働きがあるため、発酵を活かした食品は日本だけでなく、世界中に存在していて古くから人々の生活に取り入れられてきました。乳酸菌を含む食品の代表例としてはヨーグルトやチーズ、漬物、醤油、味噌などがあります。

また、乳酸菌にはカラダの中における生理機能として、悪玉菌の繁殖を抑え、腸内環境を整える働きがあると言われていることは良く知られていますが、近年では乳酸菌の摂取が花粉症対策の一つとして注目されています。数ある乳酸菌の中でも植物由来のLactiplantibacillus Pentosus ONRICb0240(乳酸菌ONRICb0240)では目、鼻、口、などの粘膜で異物の侵入を防ぐ働きを主体的に担っている「IgA」という抗体の分泌を高める働きがあると言われています。

食物繊維やオリゴ糖、乳酸菌などは継続して食べることによって健康効果が表れてきます。花粉症対策と合わせて、免疫維持のためにも日々の食生活を改善しつつ、これらの食品の摂取を習慣づけることで良好な腸内環境を維持してみてはいかがでしょうか。

まとめ
▷花粉症患者の増加は企業の生産性にも大きな影響を与える。
▷企業にも花粉症対策が求められている。健康経営優良法人認定制度の評価項目にも、「花粉症に対する具体的な支援」が追加された。
▷日本における花粉症患者は、10年に約10%ずつ増えている。
▷花粉症対策の基本は、花粉について正しい知識を持ち、花粉との接触を避けること。そして、免疫力を高めるために、規則正しい生活習慣を心がけることも大切。
▷腸内環境を整えることも花粉症対策のひとつの方法。

参考サイト・文献:
日本気象協会 2024年 春の花粉飛散予測(第1報)~今夏の猛暑が影響して例年比1.2~2.3倍に 前シーズンよりは減少傾向~
健康経営優良法人認定制度(METI/経済産業省)
Lamb C.E. et al. Current Medical Research and Opinion; 22, 2006
花粉症の原因 - 厚生労働省
Ⅰ.花粉症とは - 環境省
「プロバイオティクスとアレルギー」*1 原田岳ら: アレルギー 2018; 67: 197-201.

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