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【連載第12回】幸せなチームの5つの法則


健康経営の目的は、企業が従業員の健康を経営課題ととらえて健康投資を行い、従業員が健康でイキイキと働けることです。そのためには、個人へのアプローチだけでなく、組織の健康度を高める施策も不可欠です。そこで今回は、組織=チームの健康度を高める具体策をご紹介。チームが健康であってこそ、メンバーの健康度も高まります。

この連載では、公認心理師として多くの企業でメンタルヘルス対策のサポートをしている株式会社ハピネスワーキングの船見先生に、メンタルヘルス向上の具体策をご紹介していただきます。
幸せなチームとは、ウェルビーイングの高いチーム
 
私はこれまで約1000社のストレスチェック結果を見てきました。そんな中で気づいたのは、チェック結果が良好なチームには共通する法則があるということ。その法則を追求することで、チームの健康度を上げていくことができるとも言えます。

今、ウェルビーイングというキーワードがあちこちで使われています。ココロもからだも、そして社会的存在としても健康でイキイキしている状態を表すワードで、日本語では「幸せ」「幸福」と訳されています。
ストレスチェック結果が良好なチームは、まさに「幸せなチーム」といえます。
では早速、そんなチームに共通する5つの法則をご紹介しましょう。

第2の法則は、「仕事の負荷がいいあんばい」。仕事の負荷には、量と質があります。忙しさ、難しさのようなものです。これらの負荷は、高すぎれば疲弊の要因になりますが、低すぎるとモチベーションが上がりません。程よい状態が望ましいわけですが。幸せなチームはそれがほどよく保たれるよう調整をしているのです。

人手不足の今、業務量を調整するのは確かに大変です。質に関しても、人によって感じ方が異なりますから、こうすればいいという答えはありません。しかし、仕事の目的を明確にし、それに対して必要でないものは削減することで業務量は減っていくはずです。また、ひとつの業務を必ず複数人で担当するようにし、属人化させないことで、質の軽減につながります。

第2の法則は、「自由度が高い」。意見を言える自由、裁量度が高い自由、感情を出せる自由。この3つの自由度が高いということです。
幸せなチームには、心理的安全性があり、誰もが自由に意見を言える状態が保たれています。

また、自分なりのやり方で仕事を進めることができる裁量度の高さや、不安や心配などのネガティブな感情であっても表現できる風土があるのも特徴です。
仕事の手順が決まっていて裁量度が少ない仕事の場合、ストレスがたまりやすくなります。それでも、自由に意見を言える環境であれば、ストレスの軽減につながります。まずは心理的安全性を高める工夫をすることで、3つの自由度は連動して高まっていくでしょう。
ワクワクするビジョンを掲げてチームワークを高める
 
第3の法則は、「仕事の充実感が高い」。メンバーが仕事にやりがいを感じているということです。やりがいをいかに高めるかということは、多くの方の関心事です。その方法はいくつかありますが、なんといっても、人の役に立てている実感を持てることが、やりがいに直結します。

お客やユーザーと直接触れ合う仕事であれば、感謝されることで、その実感をもつことができます。しかし、縁の下の力持ち的な仕事の場合、自分のしていることが誰かの役に立っているかは感じにくいでしょう。

そこで、チーム内で「感謝習慣」の仕組みをつくってみてはいかがでしょうか。
感謝しあうことで、自分の存在意義をメンバーそれぞれが自覚でき、やりがいを感じられるようになっていくでしょう。会議の中に感謝タイムを設けて発表するもよし、感謝を書き込める掲示板を作るのもいいですね。
感謝は、思っているだけでは伝わりません。形にして伝えあいましょう。

第4の法則は、「認め合う文化がある」。幸せなチームは、互いの違いを認め合おうという意識を持っています。そんな風土を醸成するためにまずは、相手の考えや意見をよく聴いて受け止めることが大切です。同意できないことであっても頭ごなしに否定しない。いったん受け止めて、なぜそのような考え方が生まれたのかを聴いていく。メンバーが、そんな姿勢を持つことで、認め合いの文化が育まれます。

「否定せずに受け止めあおう」。この言葉を合言葉に、チーム内コミュニケーションを進めることから始めていただければと思います。

そして第5の法則は、「チームワークが良い」。チームワークとは、ひとつの目標に向かって、メンバーが一丸となって進むこと。この「目標」とは、単なる数値目標ではなく、ワクワクするようなビジョンのことです。「私たちは、地域のお客様の幸せサポーター」とか、「社内の正義のヒーロー!」など、こんな存在でありたいという理想像を描くのです。

明確なビジョンは、各自が何かに悩んだときに何を選べばいいか、どう行動したらいいか選択する指針となります。メンバーが迷わなくなるのです。そして、議論の際にも、「これはビジョンにつながっているか」という観点で議論できるので、スムーズに進むようになります。
仕事の目的をはっきりさせることと併せて、ワクワクするようなビジョンを描くと、メンバーの意識が変化していくと思います。

多様な人が集まるチームをまとめ、幸せなチームを作るのは、容易いことではありません。しかし、小さな一歩は必ず、大きな変化につながります。簡単にできることから始めてみてはいかがでしょうか。
 




【プロフィール】


船見敏子(ふなみ・としこ)

株式会社ハピネスワーキング代表取締役。
公認心理師、1級キャリアコンサルティング技能士、産業カウンセラー。
雑誌編集者を経て現職。産業分野を中心に、組織コンサルテーション、カウンセリング、研修などを実施し、職場のメンタルヘルス向上のサポートをしている。これまでに約1000社、10万人のメンタルケアに携わってきた。著書に『言い返せない人の聴き方・伝え方』(日本能率協会マネジメントセンター)、『幸せなチームのリーダーがしていること』(方丈社)など。

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