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【連載第4回】職場内相談窓口利用率を高める秘策

健康経営を進めるうえで欠かせない取り組みのひとつが「職場のメンタルヘルス対策」です。ストレス要因が多い現代、メンタルヘルスケアは私たちの必須スキルと言っても過言ではありません。
また、組織においては、不調の早期発見・早期治療だけでなく、従業員がストレスを抱え込まず健康にイキイキと働ける環境を整える対策が非常に大切です。とはいえ、いったい何から始めればいいのかお悩みの方も少なくないでしょう。

この連載では、公認心理師として多くの企業でメンタルヘルス対策のサポートをしている株式会社ハピネスワーキングの船見先生に、メンタルヘルス向上の具体策をご紹介していただきます。
健康経営においては、「メンタルヘルス不調者への対応に関する取り組み」も欠かせません。不調の早期発見のためにも、誰もが相談できる窓口の設置はとても重要です。最近ではチャット相談などのニーズが高まってきていますが、今なお、職場内の相談窓口は利用しにくいという声がよく聞かれます。どうしたら利用してもらえるようになるのか、その秘策をお伝えします。






職場内での相談はハードルが高い

「会社の相談窓口の利用率が低くて……。せっかく窓口があるのに、誰にも相談せず悩みを抱え込んで調子を崩す人が多いんです」。
人事労務担当の方からよく聞くお悩みです。カウンセリング窓口を職場内に設けているけれど、あまり利用してもらえないというのです。

職場内にカウンセリング窓口を設置する企業は増えてきていますが、その利用率は残念ながら高くはないところが多いようです。
そもそも、まじめで「人に迷惑をかけてはいけない」という信念を強くもつ日本人にとって、人に相談することへのハードルはとても高いものです。相談=迷惑をかけると思いこんでいる人が多いからです。それが職場内の窓口ならなおさら。
「相談したら秘密が漏れてしまうのではないか。不利な立場になるのではないか。仕事の悩みを上司でもない人に相談していいのか」など、さまざまな不安を抱いています。窓口を設けても利用率が上がらないわけです。

気軽に相談していいというメッセージを打ち出す

ところが、カウンセリングの利用率がとても高い企業があります。毎月のカウンセリングデーは、いつもほぼ満席。自ら希望してカウンセリングを受ける人が多く、管理職も積極的に利用しています。
仕事で疲れている、部下対応の仕方がわからない、家族の心配事がある、心理学に興味があるなど相談内容はさまざまですが、カウンセラーにじっくり話を聴いてもらった人たちは皆、気持ちを軽くして部屋を出ていくといいます。
そんな状況ですから、ストレスで疲弊している人の早期発見・早期治療にもつなげられていますし、問題解決による生産性向上効果も出ています。
なぜそのようなことが実現できているのでしょうか。
 
その企業では、10年ほど前からメンタルヘルス研修を定期的に実施してきました。教育によって知識が蓄えられているため、メンタルヘルスやカウンセリングに偏見を持つ人が少ないようです。
また、カウンセリングの利用率を高めるために人事がさまざまな工夫をしています。
まずは、名称。「カウンセリングルーム」「健康相談室」といった名称を用いる企業が多い中、そこでは「チャットルーム」というカジュアルな名称にしています。「気軽に話してください!」というメッセージを込めているのです。
さらに、窓口の紹介には、相談員の笑顔の写真とわかりやすいプロフィールを掲載。安心して相談してもらえるような雰囲気づくりを行っています。
カウンセリングデーを月に2度に増やす計画も検討しており、利用率をさらに高めるために、相談員や人事担当者が動画でPRをする案も出ています。

このように明るく、ラフに発信をすることは、窓口の利用率を高めるだけでなく、「相談することは迷惑をかけることではない」という意識を高めるのにとても効果的といえます。その意識を皆が持つようになれば、相談することへのハードルが下がり、職場内でも互いに相談しやすくなって、仕事や悩みを抱え込みにくくなっていくはずです。
 
「メンタルヘルス」を直訳すれば「心の健康」。WHO(世界保健機関)は、メンタルヘルスを「自身の可能性を認識し、日常のストレスに対処でき、生産的かつ有益な仕事ができ、さらに自分が所属するコミュニティに貢献できる健康な状態」と定義しています。本来はとてもポジティブなものなのですが、日本においてはメンタルヘルスにもカウンセリング(相談)にも、ネガティブなイメージや偏見が今なおあることは確かです。それを払しょくするには、イメージを変える工夫が必要です。
誰もが気軽に相談しあえる職場づくりのために、ぜひ明るくメンタルヘルス対策に取り組んでいただきたいと思います。




【プロフィール】



船見敏子(ふなみ・としこ)

株式会社ハピネスワーキング代表取締役。
公認心理師、1級キャリアコンサルティング技能士、産業カウンセラー。
雑誌編集者を経て現職。産業分野を中心に、組織コンサルテーション、カウンセリング、研修などを実施し、職場のメンタルヘルス向上のサポートをしている。これまでに約1000社、10万人のメンタルケアに携わってきた。著書に『幸せなチームのリーダーがしていること』(方丈社)など。



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