【後編/熱中症対策編】目標は熱中症ゼロ!暑さを乗り超える多方面からのアプローチ
運送業は配送先での荷物の積み下ろしや倉庫での作業など、特に夏場の環境は過酷です。そこで今回は健康経営に取り組んでいるサイショウ・エクスプレス株式会社、代表取締役の齋藤敦士さんに、同社で実践している熱中症対策について伺いました。
※前編はこちら
基本情報と食事面からアプローチ
- 運送業では、特に夏場の業務において熱中症対策が重要になってくると思いますが、どのような対策をされていますか?
産業医による月1回の合同安全衛生委員会で話題になった熱中症対策についての情報を社内で共有したり、熱中症警戒アラートが発表されたら配車係からドライバーに注意を促したり、対面点呼の際に呼びかけしたり、基本的なことが中心です。
ほかには、食事面でご飯、梅干し、味噌汁、納豆など、ベーシックな日本食をすすめています。味噌汁や梅干しは適度に塩分もあるので、たくさん汗をかく夏場にはちょうどいいのではと思って、事務所に梅干しを常備しておくと、意外とみんな食べてくれますね。
- 常に情報を発信し、注意喚起すること、また身近な食事面からのアプローチなどが大切なのですね。
熱中症についての正しい知識を従業員に伝えて、どんな対策が必要なのかアドバイスをしていけば、従業員が「熱中症対策をしなければ!」と自ら思うようになります。また、実際に行動にうつせるようにするのが私の役目ではないかと考えています。
“飲める氷”は熱中症対策の新戦力
- 御社では大塚製薬の「ポカリスエット アイススラリー」を導入されていますが、きっかけや活用方法をお聞かせください。
社内で熱中症対策に向けた啓発活動を毎年行っていたのですが、実は、熱中症発症者が時折出てしまっていることが悩みでした。そんなある時、人気スポーツの日本代表が夏場や中東での過酷な試合の際、試合前やハーフタイムに飲んで体を冷やしていることを聞き、「うちでも作業前に摂取しよう!」と声をかけて、2020年から従業員が活用しています。「アイススラリー」は、細かい氷の粒子が液体に分散した流動性ある氷で、カラダを内側から冷やすという特長があります。「ポカリスエット アイススラリー」は塩分など電解質がとれ、量も100gなので一気に飲んでクールダウンでき、新たな熱中症対策として期待しています。
- 実際に導入してされて、従業員の反応はいかがですか?
事務所と倉庫の冷凍庫に常備していて、減っていくペースはかなり早いですよ。最近、「プレクーリング」という活動前に体温を低下させることが熱中症に有効だと注目されています。私は毎朝1時間ほど、会社の掃除をしているのですが、夏場はアイススラリーを飲んでから掃除をしていて、確かに活動前に飲むと体内に熱がこもらずに、冷えた状態が持続している感覚がありますね。味は濃すぎないなので飲みやすく、手でもむようにすると溶けやすいですし、重宝しています。また常温保存できるので一度に全部のアイススラリーを冷凍庫に入れなくていいのも助かります。
運送業界が抱える熱中症対策の課題
- 産業医や健康管理士のアドバイスのほかに、参考にされていることはありますか?
当社の取引先の関係で建築現場に配送することがあるのですが、炎天下で作業されている建築関係の方々は熱中症対策への意識が高いと感じています。当社も参考にして、空調付き作業着を取り入れていますが、コストの問題もあって全員には行き渡っていないのが現状です。
- 熱中症対策について、課題などあればお聞かせください。
夏場は気温が体温より高くなる日もあり、誰もが意識的に水分補給をするのですが、お盆を過ぎて少しずつ気温が下がり、過ごしやすい日が多くなる9月に熱中症になるパターンが意外と多いと感じています。みんな油断してしまって、水分補給を怠っているようなので、その点については注意喚起をしていきたいですね。
また、運送業界が常に抱えている課題としてはトイレ問題があります。熱中症対策として水分摂取は必須ですが、水分をとるとトイレに行きたくなります。しかし実際のところトラックを気軽に駐車できる場所はそんなにたくさんありません。このジレンマを解消する良い方法を見つけたいですね。
<社長プロフィール>
サイショウ・エクスプレス株式会社
代表取締役 齋藤敦士
2001年にサイショウ・エクスプレス株式会社に入社し、家業である同社を誇れる会社にすべく尽力する。2017年1月より健康経営プロジェクトに取り組む。2021年3月に事業を継承し代表取締役に就任。運行管理者、整備管理者、安全衛生推進者、ほめ達3級など、業務から経営に関わるさまざまな資格を取得。東京都トラック協会青年本部組織委員、東京トラック協会深川支部青年部長。趣味はゴルフ、ジムでトレーニング、娘と遊ぶこと。