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【後編サウナで健康経営を考える】 医師に聞くサウナの効果とビジネスとの親和性 



企業の業績向上と社員の健康。これは切っても切れない関係であり、今日本の企業は戦略的に社員の健康向上に取り組んでいる。社員の健康を積極的に改善する企業や取り組みを紹介する本企画。前回は「サウナ」を利用するビジネスマンや企業が増えている中、ことにフォーカスをあて、サウナの効果を現役医師である加藤容崇氏に伺った。今回は後編。「休む」ことが非常に重要視される昨今のビジネス環境に対し、強制的にオフにできることがサウナの魅力と加藤医師は見解を述べた。ではなぜサウナはそのようなことができるのか。より深いサウナの効果と、医師ならではのサウナの入りかたを伺った。

前編はコチラ





日本サウナ学会代表理事、加藤容崇氏

交感神経からの副交感神経。この振り幅の大きさはサウナならでは

〜インタビュー記事前編。サウナが自律神経を強制的にオフにする効果があることを聞いて〜

サウナ―けた:自律神経をコントロールする、いわゆる「強制的にオフにする」ということの価値はとても理解できましたが、なぜサウナだけこのようなことができるのでしょうか。

加藤氏:他のものでもできます。お風呂やマッサージでも副交感神経に傾かせることはできるんです。ただ、サウナのなにがすごいかって、一種のショック療法のようなことができることです。

サウナ―けた:ショック療法???

加藤氏:はい。わかりやすくいうと、学生の時にプールの授業ってありましたよね。プールの授業の後ってものすごく眠たくなりませんでした?

サウナ―けた:はい!だいたい次の授業は居眠りしてました!

加藤氏:あれはなぜかというと、もちろん個人差によりますがありますが、プールは冷たい水に長時間、しかも運動しながら入っているので、もうめちゃくちゃ交感神経に傾いているんですよ。その後、服を着て落ち着いて座っていると、今度はものすごく副交感神経に傾くんです。この振り幅がプールってものすごく大きいんですよね。故に身体体が強制的にオフになって眠たくなる。お風呂も副交感神経に傾かせられますが、交感神経からの振り幅が少ないんです。日常生活でこの交感神経→副交感神経の振り幅が出せるものってなかなかないんですよ。それに対してサウナは、熱いサウナ、その後すぐに冷たい水風呂と、かなり交感神経を追い込むことになります。その後の休憩、外気浴などで反動をつけて副交感神経に傾かせることになる。この振り幅の大きさがまさにショック療法、強制的にオフにさせられるることの秘密です。


サウナは短い睡眠時間で大きな効果が期待できる

サウナ―けた:交感神経から副交感神経への振り幅。ここにサウナの「強制的にオフにできる」いわゆる「休み」の秘密があったわけですね。ほかにサウナで期待できる効果としてどのようなものが挙げられますでしょうか。

加藤氏:さらに重要な効果としては、睡眠効果が挙げられます。ぐっすり眠ること、というのは実はものすごく大切で、うつ病対策などの重要なファクターとなります。うつ病の方、認知症の方、不眠の方、共通して起こっていることは、脳へのヘルツ数(刺激)が下がっていることです。脳へのヘルツ数が下がるということは、ざっくり言うと脳へのパフォーマンスが下がるということで、下がったパフォーマンスはなかなか上げられないんですよ。ただ、サウナに入ると脳へのヘルツ数がすごく上がるんです。熱い→冷たい、という刺激が脳に入るんでしょうね。それが脳へのパフォーマンス向上へと繋がります。

サウナ―けた:おお……、サウナにそんな効果があったとは……。理屈を知るとなんだかすごくすっきりしますね……。

加藤氏:話を睡眠に戻しますが、睡眠にはざっくり「深い睡眠」と「浅い睡眠」があります。これらを交互に繰り返し最後に覚醒、目が覚めるということになりますが、サウナに入ると一番最初の「深い睡眠」のターンだけ、時間量がバン!と増えます。そのあとは変わらず浅い睡眠→深い睡眠と繰り返されます。なので短い睡眠時間でもかなりの睡眠効果が期待できます。

サウナ―けた:サウナに入った後の快眠効果にはそのような秘密があったんですね!

加藤氏:はい。ちなみにお酒を飲むと、「浅い睡眠」の時間量が増えます。お酒飲んだ翌日にが疲れが抜けないなと感じるのはそのせいでしょうね。

サウナ―けた:深酒……、気をつけます……。


サウナとビジネスの親和性の高さ

サウナ―けた:サウナには様々な健康効果があることがわかりました。ぼくの周りの仕事に忙しい友人たちも、よくサウナを日常生活のなかに取り入れてますが、サウナとビジネスは相性がいいのでしょうか。

加藤氏:サウナとビジネスは親和性が高いです。理由は「実現可能性が高く、短時間でわかりやすい成果が得られることから非常に相性が良いです。」というところにあるからでしょう。パフォーマンスの高いビジネスライフを過ごすために日々、健康を意識することは習慣はとても大切なことですが、ここで重要なことはそのハードルを下げることです。健康習慣は日々の生活に溶け込むものなので、大変な努力や難しい技術を強いても長続きしません。それこそ楽しくて気持ち良くて子どもでもやりたいと思えることでないと日常的には機能しないんです。

サウナ―けた:たしかに……。なんだか健康習慣のためにストイックさとか求められても、途中で絶対飽きちゃいますもんね……。

加藤氏:時間が限られた忙しいビジネスマンにとって、短い時間でお手軽にコスパ良くメンタルやフィジカルをととのえる。その環境こそが、ビジネスとサウナの親和性の相性の良さ高さといえるでしょう。



正しいサウナの入り方は「無理をしないこと」

サウナ―けた:サウナの効果やビジネスとの親和性は非常によく理解できました。ぜひ加藤先生からみた「正しいサウナの入り方」を教えてください。

加藤氏:基本は、サウナ→水風呂→休憩、ですが、サウナに行き過ぎはよくないです。毎日サウナに入ったとしても、1日1回が限度です。朝、昼、晩、1日3回を毎日入る、こうなってしまうと皮膚が炎症を起こしてしまいます。

サウナ―けた:うう……、気をつけます……。

加藤氏:熱すぎるサウナに何度も長時間入ると、日焼けのホルモンも一緒に分泌されます。サウナは基本、無理をしない、行き過ぎない、入りすぎない、です。あとは、慣れていないのに極端に熱すぎるサウナ、冷たすぎる水風呂に何度も入ると自律神経が対応できずに失神することもあります。何事も無理せずほどほどにしてください。

サウナ―けた:激アツサウナとキンキン水風呂が大好きなので、入り過ぎには気をつけます!

加藤氏:あと、サウナに入る前に食事は避けてください。食べ物の消化に血液が必要なのに、胃に食事が残ったままサウナに入ると消化に必要な血液が皮膚に回ってしまうので消化不良を起こします。食事をするならサウナの後ですね。あとこれは当たり前あたりまえの話ですが、きちんと入浴前後の水分補給も忘れずに。

サウナ―けた:たしかに。サウナの前にご飯を食べると、なんかちょっと胃に残ってる感じがしますもんね……。食事はサウナの後の楽しみに取っておく。あとはサウナの前後にはしっかり水分補給ですね!

加藤氏:また、女性の方は男性以上に体調や周期を考慮して欲しいです。あまりにも熱すぎるサウナ、冷たすぎる水風呂を何度も繰り返していると、月経不順に陥りやすいです。その理由は、強度なサウナ浴で、プロラクチンとベータエンドルフィンが出過ぎてしまうからです。


サウナ―けた:プロラクチン??ベータエンドルフィン?

加藤氏:プロラクチンは授乳時などにでるホルモンで、ベータエンドルフィンは言うなれば快楽物質です。これらの過剰分泌は月経不順に繋がってしまいます。もし女性の方で熱いサウナに入る時があれば、なるべくこれらの分泌を抑える必要があります。そのもっとも手っ取り早い方法は、タオルで顔を覆うことです。

サウナ―けた:そうなんですね!それはとても有力な情報ですね……。

加藤氏:はい。女性用のサウナは温度が低い施設が多々ありますが、それはあるいはとても理にかなっていることです。いずれにせよ男性も女性も、無理をしない入り方でサウナを楽しんでください。サウナは日常的に最も手軽で費用対効果の高い良い、健康習慣のひとつにによる「予防」になりますから。



サウナ―けた:今回は前編・後編にわたって加藤先生を招き、サウナの有用性を伺ったが昨今の劇的な変化に伴う心身へのケアとして、「健康経営の一環としてサウナ」はすぐにでも取り入れることができる有効な手段ではないだろうか。


※サウナ入浴時は下記の点にご注意ください
・高血圧、血圧が高めの方の長時間入浴
・生活習慣病のある方の長時間入浴
・飲酒した状態での入浴

上記の他にもその日の体調等こまめな水分補給を行いながら、体調に気を使い、無理のない範囲で快適なサウナを心がけるようにしてください。



<プロフィール>


加藤容崇
群馬県出身。北海道大学医学部医学科卒。 医師・医学博士。北海道大学医学部にて特任助教として勤務したのち渡米。ハーバード大学医学部附属病院に勤務。膵臓癌の創薬に関する研究を行う。帰国後、慶應義塾大学医学部腫瘍センターゲノム医療ユニット、北斗病院腫瘍医学研究所に勤務し、癌ゲノム医療を行なっている。加速する医療費増加を目の当たりにし予防医療の重要性を認識。予防医療としてのサウナを研究するため日本サウナ学会を設立し、サウナをフィルターとして地方のゆたかなヒト・モノ・場所を再接続して価値を高める地方創生プロジェクト『ヴァルス計画』(株式会社OneGreen)を主宰している。 著書に『医者が教えるサウナの教科書』(ダイヤモンド社)があり、ホンマでっかTV(フジテレビ)、文藝春秋、などメディア掲載多数。医療漫画『フラジャイル』(講談社)の医療監修も務める。

 


瀬尾圭太(サウナ―けた)
サウナ専門メディア「サウナタイム」代表
ブライダル情報誌「ゼクシィ」の企画営業を経て、ブライダルジュエリーブランド、ブライダルITメディアの経営に従事。苛烈な経営環境から仕事終わりにサウナに行くようになり、そこからサウナの世界にのめり込むようになる。サウナとビジネスの親和性を身を以て体験した。サウナタイムはサウナの入り方や効能、サウナのトレンドなどを発信する日本初となるサウナ専門のwebメディア。マガジンを中心に、サウナ検索や口コミ投稿などもできる。