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【前編サウナで健康経営を考える】ドラマ「サ道」プロデューサー五箇公貴氏に聞く、“サウナの魅力”



企業が社員の健康と向き合う連載企画。今回インタビューに伺ったのは、元テレビ東京のプロデューサーであり、現在は鉄鋼商社である株式会社ゴカの社長をされている五箇公貴氏。五箇公貴氏は様々なヒット番組や映画のプロデュースに携わっており、中でも2019年のドラマ「サ道」は、サウナの心地よさを広めて昨今のサウナブームの先駆けとなった。
現在は、株式会社ゴカの社長として活躍するとともに、前職の経験を活かしてテレビ番組のプロデュースやサウナに関するコラムの執筆などの活動も精力的に行っている。自身の健康維持、そして経営にもサウナが欠かせないという五箇氏に、サウナの魅力やサウナを取り入れた健康経営について語ってもらった。


テレビドラマ「サ道」に携わり、サウナの魅力を知る

― もともとテレビ局にいらして、今はご家業を継がれ株式会社ゴカの社長をされているとのことですが、経歴を簡単に教えていただけますか。

五箇氏:1998年にテレビ東京に入社し、2020年3月に退社するまで主にバラエティ番組やドラマなどの制作に携わり、多岐にわたる作品をプロデューサーとして担当しました。
私はテレビ局のADからキャリアをスタートしました。当時は家に帰ってゆっくり眠れるような環境ではなかったので、自分をリセットするために合間をぬって六本木のサウナに行っていました。休みの日は朝に仕事から解放されると、早朝も営業している自宅近くの大きなスパに直行してリラックスし、生きている実感を得ていたというのが、私のサウナ原体験です。


― そうしたサウナ体験が、サウナを扱った人気ドラマ「サ道」につながったんですね。

五箇氏:原作はタナカカツキさんの“サウナ伝道漫画”「サ道」です。当時ドラマ化の候補に作品が挙がり、監督の長島翔さんもぜひドラマ化したいと情熱をもってくれて企画が進行しました。
原作者のタナカさんとはかねてから付き合いがあったのですが、長島監督と2人で改めてドラマ化の挨拶に行こうとしたら、横浜の大きなサウナに呼び出されました(笑)。
サウナの魅力を語っていただいた後にドラマのコンセプトを説明したら、好きにしていいよと言ってくださり、企画が実現しました。

*テレビドラマ「サ道」
2019年7月テレビ東京で放送。主人公が様々なサウナを訪れ「ととのう」(サウナ入浴によって多幸感を得ること)姿を描く。主演は原田泰造さん。



― ドラマ「サ道」がヒットした頃からサウナブームが一気に盛り上がりました。

五箇氏:漫画が出版された2015年ぐらいからじわじわとブームが来ていました。
サウナの口コミ検索サイトなども出てきた時期で、サウナの認知を「サ道」が広げられたのではと思っています。


― 「ととのう」という言葉もドラマ内で紹介されて広がりました。

五箇氏:作中では、サウナ・水風呂・外気浴というルーティンを勧めています。
このルーティンをすることで得られる多幸感やリフレッシュ感覚をタナカカツキさんが「ととのう」と表現し、それを広めている感覚です。
作品に携わるうちに、サウナの魅力に取りつかれていきました。


― そうして五箇さんはサウナ通になられていったんですね。

五箇氏:ドラマ「サ道」を通じて、色々なサウナ関係の人と会うようになりました。
中でもサウナの経営者って独特で、サウナに対する思いが熱い人たちが多く、人をいかに喜ばせたり気持ちよくさせたりするかを真摯に考えています。
サウナラボや株式会社ウェルビー代表の米田行孝さん、錦糸町ニューウィング支配人の吉田健さんなど、個性的な人たちに会えば会うほど、サウナって面白い!と思うようになりました。
皆さんとても高い思想をもってサウナを経営されていることに驚きましたし、人はどうしてサウナに惹かれるのかに興味を持つようになりました。
当時は自分が経営者になるとは思ってもいませんでしたが、様々なサウナ経営者の思想に触れたことは、今も大きな影響を受けています。


サウナでリフレッシュしながら、自分を客観視するように

― 経営のお話が出ましたが、現在の立場への転身について教えていただけますか。

五箇氏:私が社長をつとめる株式会社ゴカは、北区王子という東京の下町にある老舗の鉄鋼商社です。
医療メーカーさんや自動車メーカーさんのニーズに応じて、注射針やエンジンの部品などの製品を納入しています。
ずっと父が経営していましたが、私が40歳くらいの頃から父が体調を崩すことが増えてきて、仕事を継ぐことが視野に入ってきました。
テレビ局のプロデューサーという得難い仕事ができて充実していたので数年悩みましたが、2020年45歳のときに決断し、テレビ東京を退社してゴカに入社しました。


― 業種も規模も全く違う会社への転身、相当ご苦労されたことと思います。
リフレッシュはやはりサウナだったのですか。


五箇氏:週に1回でもサウナへ行くことで、ストレスや疲れを洗い流してリフレッシュしていました。自分が一番つらかったAD時代の原体験がありますし、テレビ東京から株式会社ゴカへと環境が変わったなかで、精神的につぶれずにいられるのもサウナのおかげです。


― 身体的な疲労だけでなく、精神面でもサウナに支えられたのですね。

五箇氏:「サ道」では「ととのう」と呼んでいますが、サウナ・水風呂・外気浴のサイクルで身体や精神の癒しを感じることができるのはどういう仕組みなんだろうと思ったんです。それを調べていくうちに、座禅やマインドフルネスにつながるものがあると勉強できたのは個人的に大きいです。
今、私はゴカの業務の他にも、前職からつながっている映像プロデュースやコラム執筆といったエンターテイメントの仕事を個人でしています。
両極端な仕事のバランスを自分の中でどう取っていくのか、自分は何のことで悩んでいるのかということを、サウナでリフレッシュしながら客観視するようになりました。


― エンターテイメントと鉄鋼商社、両極端で「温」と「冷」みたいですね。双方が影響し合っていることはありますか。

五箇氏:エンターテイメントと鉄鋼商社、どちらかだけをしていたら本来はクロスしない人と会うことが多いです。転身から2年経って徐々に、人とのつながりがもう一方の業務でも生かせるようなことが増えてきました。
後編では、サウナを取り入れた健康経営について伺います。




〈プロフィール〉


株式会社ゴカ 代表取締役/映像プロデューサー
五箇 公貴

1975年東京都北区王子生まれ。1998年、テレビ東京入社。以降、プロデューサーとして数多くのテレビドラマ・映画・バラエティ番組を制作。代表作に、ドラマ「サ道」、「電影少女」シリーズ、「100万円の女たち」、「湯けむりスナイパー」、映画「舟を編む」、「ゴッドタン・キス我慢選手権」、ドキュメンタリー「田原総一朗の遺言」などがある。2020年テレビ東京を退社し、株式会社ゴカに入社。2022年同社の代表取締役社長に就任。
https://www.goka.jp/
文春オンラインにてコラム「サウナ人生、波乱万蒸。」連載中
https://bunshun.jp/category/yuge-no-kazu-dake-dakisimete